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鳥獣人物戯画_2014京都国立博物館

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「鳥獣人物戯画」(国宝、高山寺蔵)全4巻の公開が始まりました。京都国立博物館_明治古都館(本館)、2014年10月7日~11月24日(休館:月曜日)。 最近の日本の小学校の教科書にこの「鳥獣戯画」の図版が掲載されているのかどうか知りませんが、私が初めてこの図版を知ったのは50数年前の小学校の教科書で、甲巻の蛙と兎の相撲の場面でしたが、子供ながらにその軽快巧みな描写に感心したものでした。とは言え、それが絵巻物というイメージは全くなくて、先生は教えてくれたのかも知れませんが、そのようなものはイメージすら出来るわけがありません。 実物を見たのはそれから40数年後の2007年、東京六本木ミッドタウンのサントリー美術館・開館記念特別展『鳥獣戯画がやってきた』でした。全4巻を中心に国内外に分蔵される断簡、模写を広く集めて「鳥獣戯画」の全容を展覧しつつその謎にスポットをあてたものでしたが、ことのほか盛況で、18時頃入館したものの観覧の列はなかなか進まず全部見終わったのは閉館ぎりぎりの20時前という有様でした。それでもこの企画展は良い展覧でした。 実物は、印刷物などの濃度の濃い黒一色感とは異なって、思いのほか描線の色が淡く濃淡があったこと、そしてまた、全巻を通して場面によって筆達の技巧度にムラがあること、また全4巻とした時の全体のまとまりに欠けるということ、というのが「鳥獣戯画」の門外漢の素朴な印象でした。いつも思うことながら、情報媒体を通して知識として知ることと、実際に自分の目で実物を見て実感することとでは大きな隔たりがあるということ、を改めて痛感しました。 呼び名は、『鳥獣戯画』とか『鳥獣人物戯画』とか『鳥獣人物戯画絵巻』とかと色々で、国宝指定文化財としての名称は『紙本墨画鳥獣人物戯画』(指定年月日は1952年3月29日)ですが、私などは『鳥獣戯画』が一番しっくりという感じです。 謎の多いこの絵巻ですが、今回の展覧は4年がかりの修復後初の展覧で、修復時の新発見も紹介されています。頻繁に公開されるものではないので、この機会に是非お出かけ下さい。期間中展示替えがありますので、博物館サイトでご確認下さい。⇒ 出品一覧・展示替予定表

ルネサンスの胎動_《フィレンチェの富と美》

来年2015年3月に《ボッティチェッリとルネサンス---フィレンチェの富と美---》が開催されますが、ボッティチェッリ作品を中心に当時活躍した作家の絵画・彫刻・版画や資料などが展覧され、ボッティチェッリ作品は「受胎告知」・「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」(日本初公開)など10点程が来日予定と発表されています。2015年3月21日~6月28日、bunnakmuraミュージアム。 本年2014年10月11日から開催される「ウフィツィ美術館展」(東京都美術館)に続き、ルネサンスの作品を堪能できそうです。 この展覧会は、2011~2012年にイタリアで開催された「 Money and Beauty 」をベースに再構成されるようなので、ルネサンスの原動力の経済的な背景にスポットを当てた展覧会になりそうです。 ルネサンスの幕開けは15世紀末で、西洋中世期の後期にあたります。 この西洋中世期は1000年に及ぶ長い時代でその変遷は多様ですが、極めて端的な言い方をすれば、領主とキリスト教教会を頂点としてその下に農民や商工業者がいるという封建的階級社会です。現在の西ヨーロッパ地域にあった当時の国の多くは封建制の農業国でした。一方、イタリアはアルプス北方の様々な民族国家の侵略を受け支配されますが、その支配者も戦乱の中で度々交代し長続きせず、それぞれの地域が群雄割拠の状態で、西ヨーロッパに比べ緩やかな封建社会であったと言えます。 11世紀から始まった十字軍の遠征によって結果的に交易路が発達し、また東方の文化に触れた農業国の封建領主たちは東方の高価な宝石、絹、象牙、香料などを買い集めるようになります。 東方との交易が促進されることによって、イタリアの海港都市のピサ、ヴェネチア、ジェノヴァ、ナポリなどは地中海貿易で栄えます。一方、内陸部にあったフィレンチェは交易都市として発達するとともに、さらに単なる交易に留まらず毛織物や皮工芸品などの加工製造業が盛んになります。アルノ川の岸にあって、もともと農産物の集積地として恵まれていたため、地理的に羊毛や皮革が入手しやすい立地にあり、また河川を利用した水車動力による大量生産が可能で、毛織物や皮工芸品を西ヨーロッパや東方諸国に輸出するようになり、また同時に金融業が盛んとなって、繁栄の道を歩みます。 当時最も目覚ましい繁栄を遂げた都市がフィレンチェです。 中世中期