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5月, 2015の投稿を表示しています

半世紀ものの額装ご依頼が多かった!

ここ1ヶ月程の間でご依頼の多かった額装の品物は、どういう訳か半世紀ほど前の物で、企業の歩の中の歴史的書簡、個人の趣味的な記録や写真、コレクションなどなどと様々なのですが、半世紀というのは、世代の交代とか人の活動サイクルといった点では、ひとつの節目なのかも知れません。ご依頼品のひとつの企業ご担当者の方の「私もあと何年かで定年なので、次の世代へ・・・」という言葉が印象的でした。 その半世紀という歳月を経て、持ち込まれた品物はそれぞれ経年による劣化が起こっていて、額装された写真の中には、印画紙が大きく波打って画像の部分的欠損や割れが生じていたものもありましたが、傷みが比較的少ないものもあれば激しいものもあるという状態で、その度合いに差が出るのは、それぞれの物性や置かれていた環境、あるいは額装の適否などに左右されているためです。 こうした物の経年劣化は酸化や物理的変質ですので、その進行を止めることはできませんが、環境を整えることによってそのスピードや度合いを軽減させることは可能です。人間の老化を止めることはできませんが何時までも若々しく、というイメージに少し似ているかも知れません。 額装であれば、適切な材料と高度な技術で処理されることが必要です。一方で、部屋の環境も大切ですが、美術館ではなく一般的な生活の空間となると当然制限が出てくるとはいえ、それほど厳密に考えることもなくて、人間が過ごしにくい環境は物にとっても過ごしにくい、ということが基本です。

和紙_雲肌麻紙_岩野平三郎製紙所

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私などの様に美術画材の世界に関わっていて画用の和紙としてまず頭に浮かぶのは、雲肌麻紙で知られる岩野平三郎製紙所です。越前和紙の伝統技術を継承する手漉き和紙工房です。 平山郁夫画伯の薬師寺玄奘三蔵院の大唐西域壁画、東山魁夷画伯の奈良唐招提寺御影堂の障壁画群などの画紙はここで漉かれました。 一般の方はそういうところがあるのかと思われるかも知れませんが、実はかなり多くの方がその漉き場の映像をご覧になったことがあるはずなのです。 ユニクロ CM 「ヒートテック 紙漉き職人篇〈2011年〉 この映像は実に良く撮れていて、この漉き場の空気を彷彿とさせます。 薄明るい光の中のように見えるのは、漉き場の仕事が窓から差し込む自然光のみので行われている ためです。 私がお邪魔して色々とお話を伺ったのはもう十数年前で、様々な紙が漉かれていて、当時も若い方が多かった様な印象がありますが、和紙文化が若い世代に受け継がれて行く様はなんとも頼もしい。

和紙_ユネスコ無形文化遺産_美濃和紙

昨年2014年末に和紙のユネスコ無形文化遺産への登録が決まって以降、対象となった「石州半紙」(島根県浜田市)、「本美濃紙」(岐阜県美濃市)、「細川紙」(埼玉県小川町、東秩父村)を中心に和紙の話題が各方面で取り上げられることが多くなりました。 和紙そのものが登録されたようなイメージになっていますが、そうではありません。 登録の対象は和紙そのものではなくてその和紙を作る手すき和紙技術で、その登録基準要件はその技術を次世代に伝承する体制が整っていること、言い換えれば、特定の技術の保護伝承に努めている保存団体が存在することが必要です。例えば、美濃市のホームページに《美濃和紙「本美濃紙」今後の事業展開(案)/美濃和紙伝承「千年プロジェクト」》というものが記載されていますが、その実効性の是非はともかく、こうした地域的な取り組みが登録の前提にあります。伝統的な和紙製法を歴代守り続けている個人、というのは当然その対象になりません。 一口に和紙と言ってもその範疇は広く、伝統の技法と熟練の職人技で生み出された和紙も和紙であるし、あるいは機械で漉かれた和紙も和紙であるし、また特定の伝統技法ではなくても和紙原料を使用して漉かれた紙も品質はともかく和紙です。 紙を漉く時の「流し漉き」が和紙の特色のように解説した記事も見受けられますが、確かに歴史的変遷や今回対象となった和紙はそうなのですが、「溜め漉き」で作られ独特の風合いを持つ和紙もあります。技法はあくまで目標の品を創るための手段なので、目標が異なれば技法も異なります。 和紙は、古くからの仏教経典の写経用紙など文字を書く用途以外に、傘・襖・障子・器等の生活用品、あるいはまた版画・絵画等の画紙、またタイプライター用の薄葉紙、等々さまざまなところで使われてきましたが、手すき和紙産業全般で見れば、年々とそのシェアーを落とすとともに、経済産業省の統計によると、和紙生産に携わる人口は2012年620人余りで、1960年の1万人余りに比べると10分の1以下、という状況です。 「美濃和紙」と一般的に呼ばれる紙は、絵画の分野でも古くからポピュラーな紙なのですが、昨年無形文化遺産登録の対象となったのは、その中の「本美濃紙」の伝統技法です。現在、絵画向けに流通している通常品は「新美濃紙」と呼ばれるものです。 もう15年も前になるかと思いますが

子供のためのアートエクササイズ、美術性それとも創造性

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子供の日というと、その昔は写生大会が定番イベントのひとつだった様に思いますが、今ではほかにも様々なイベントもあるので、昔ほど定番ではないのかも知れません。 色材メーカーの中には、母の日を控えてカーネーションの塗り絵イベントなどをやっているところもあるので、まあ、裾野が広がったというところなのでしょうか。 住友生命が主催している「こども絵画コンクール」は今年で39回を向かえたそうで、これまでの応募総数は1058万点を越え、今回も第38回の上位102作品が1ヶ月に渡ってフランスのルーヴル美術館に展示されるようで、参加した子供達や親子さん、また絵画教室の先生たちには良い励みになりそうです。 以前、ヨーロッパの絵画筆のブランドを日本で普及させるプロデュースを行ったとき、西欧と日本とでは子供のためのアートエクササイズのあり方が随分と異なっているなぁー、と感じたことがあります。西欧といっても国や地域によって様々で一応ではないのですが、そのアプローチは「絵画」というよりも、幾分多角的な感じです。 子供達のスキルアップにとって必要なのは〈絵画の美術性"Artistry"〉それとも〈ベーシックな創造性"Creativity"〉、???。 以下の映像は、西欧の色材メーカーの子供向けアクションなどなど、です。 Creativity Can? (No Interviews) by Creativity for Kids  FABERCASTEL/JustAddImagination Encourage creativity/ STAEDTLER