投稿

4月, 2016の投稿を表示しています

日本で西洋画が始まったころ

イメージ
東京国立博物館平成館で、特別展「生誕150年黒田清輝-日本近代絵画の巨匠」が開催されています。  会期:2016年3月23日---5月15日  会場:東京国立博物館平成館 東京都台東区上野公園13-9 黒田清輝は明治中期に日本の美術制度の改革に尽力した画家です。 1884年(明治)に法律を学ぶために渡仏しましたが、当時日本はフランス法に基づいた民法制定の流れがあったものの、プロイセン憲法に準拠することになってしまい、当時すでにパリで絵画を学んでいた山本芳翠や美術商の林忠正などの勧めもあって洋画家を志すようになり、ラファエル・コランに師事し、1891年にはフランスの公募展に『読書』が入賞し、1893年に帰国後、洋画美術界の底上げに取り組むようになります。 19世紀のフランスはフランス革命の中で大きな社会変動があった時期で、社会の意識変化に伴って、その前半には古典への回帰の新古典主義や浪漫主義が起こり、過去の様式が復活し混在します。建築で見れば、新古典様式のエトワール凱旋門(1806-1836年)、マドレーヌ寺院(1806-1846年)、ネオ・ゴシック様式のノートルダム寺院やローザンヌ寺院の復旧、ネオ・バロック様式のオペラ座(1861-1874年)等が挙げられます。絵画でも同様に新古典主義、浪漫主義が現れますが、近代社会に移行するに従って、自然主義・写実主義の流れが生まれ、後半にはさらに印象派の隆盛が始まり本流となりつつも、印象派といっても個別に見れば多様ですし、また一方ではそれとは一線を画した象徴主義の潮流も生まれ、公共建築の内部装飾で筆を振るったピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(Pierre Puvis de Chavannes, 1824-1898)、幻想的な色彩を展開したギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau, 1826-1898)、神秘的な絵を描いたオディロン・ルドン(Odilon Redon, 1840-1916)等が活躍します。さらに一方では、オリエント趣味のジャポニスムが流行る、という具合で、こうした新旧てんこ盛り状態の中で一口に『西洋画』を学ぶといっても、これはなかなかと選択肢が広い。 日本の洋画風絵画は江戸鎖国時代に長崎出島から輸入されたガラス絵などの影響をうけて18世紀末ごろから現れて