投稿

10月, 2017の投稿を表示しています

色材_その系譜1

イメージ
現代では絵具の色は迷うほど沢山あるので、絵を描くとしてもさほど困ることはありませんが、さてさて、昔の人、さらにもっと昔の古代の人たちは、色の選択肢をどのくらい持っていたのでしょうか。 「顔料」という観点からその流れを大雑把に眺めてみます。 ◇◇~紀元前2000年◇◇ *特別の加工技術を必要としない身近な顔料利用の時代* ・白=堆積物白亜、 ・黒=木などの燃えた炭 ・黄系=黄土〈イエローオーカー〉(地中の土) ・緑系=緑土〈テールベルト〉(地中の土) ・茶系=アンバー(地中の土) ◇◇紀元前2000~1000年(エジプト古王朝時代)◇◇ *加工(粉砕や腐食)を必要とする鉱物顔料・人工顔料の登場した時代* ・赤、オレンジ、青、黄、緑=鉱物 ・鉛白 ・青系=エジプトブルー(ブルーフリット) ・黄系=マシコット ◇◇紀元前400~100年頃◇◇ *加工を必要とする新しい顔料の登場した時代* ・青系=インディゴ ・紫系=チリアンパープル ・緑系=ベルデグリ ◇◇13世紀~14世紀◇◇ *化学技術の発達で色数が大幅に増加した時代《ガラス産業や染色産業の発達》* ・黄系=鉛スズ系イエロー ・赤系=有機顔料(赤系のマダー、他)、新製法のバーミリオン ・青系=新製法のウルトラマリン ◇◇18世紀◇◇ 青系=プルシャンブルー〈北斎の浮世絵にも使用されたブルーです〉 黄系=ネープルスイエロー ◇◇19世紀◇◇ *さらなる化学技術の発達で色数が大幅に増加した時代* 《クロム系顔料、コールタール系レーキ顔料の出現》 ・黄系=クロムイエロー、カドミウムイエロー、コバルトイエロー、バリウムイエロー、ストロンチウムイエローなど10色前後 ・青系=コバルトブルー、人工ウルトラマリン ・緑系=ビリジャン ・紫系=モーブ(最初のコールタール系色) さて、「黄色」に限定してもう少し掘り下げて見ます。 Θ古くから利用されていた「黄土」は土から取れる最も身近な顔料で、色味は少し鈍い黄色です。 Θエジプト古王朝時代に登場する鉱物の黄色は「オーピメント」で、天然に産出しており、これを粉砕して粉にして水を加えてペーストにすると使用できるので、これも身近な黄色です。純粋なものは輝きのある「レモンイエロー」色を呈する様ですが、

葛飾北斎_HOKUSAI_TheGreatWave&RedFuji

イメージ
北斎‐富士を超えて〈あべのハルカス美術館〉が開催中です。 ~2017年10月6日‐11月9日あべのハルカス美術館  http://hokusai2017.com/ ~ 北斎の晩年30年の肉筆画を中心に約200点の作品展覧の英日共同企画展で、日本開催に先立ち、英国の大英博物館で「Hokusai_beyond the Great Wave」(2017年5月25日‐8月13日)が開催されました。 「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」©The British Museum 大英博物館にはアジア部門があり、数多くの様々な浮世絵コレクションがあります。 北斎関連コレクションは1000点ほどあり、英国開催の名称にもなっている「the Great Wave」〈「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」〉は3点のコレクションが見受けられます。 ・収得年1906年:Arthur Morrisonより購入 ・収得年1906年:Charles Rickettsより寄贈 ・収得年2008年:パリオークションで購入 この3点の中では2008年収得のものが一番状態が良い感じですが、先頃の企画展で展示されたものもこのプリントでした。 実際の額装展示では、作品イメージ周辺に余白を設けその周辺に額装台紙マド抜きが配置されていますが、この余白は版画の紙の余白ではなく、版画の周辺を隠さずに全面を見せるために特殊な方法で作品紙の周辺に補われた和紙です。 江戸時代に制作された錦絵版画は、使用された色材によっては光による退色が懸念されますが、大英博物館では公開前に自館コレクションの「レッドフジ」と「グレートウェーブ」の色材の分析調査を行っており、その結果は次の通りです。 ◇◇◇ =レッドフジ〈「富嶽三十六景 凱風快晴」〉= 「富嶽三十六景 凱風快晴」©The British Museum ・インディゴ:タイトル枠、署名、富士山の枠線、山の小さな木々 ・プルシャンブル―:空 ・プルシャンブルー+オーピメント:山肌の緑色域 =グレートウェーブ〈「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」〉= ・インディゴ:タイトル枠、署名、波の枠線、波の濃い青色 ・プルシャンブル―:波の中間色の青色 ・波の淡い青色については今後の調査を要する ・ボートの複数個所からヒ素が検出され、オーピメントの使用が示