葛飾北斎_HOKUSAI_TheGreatWave&RedFuji

北斎‐富士を超えて〈あべのハルカス美術館〉が開催中です。
~2017年10月6日‐11月9日あべのハルカス美術館 http://hokusai2017.com/
北斎の晩年30年の肉筆画を中心に約200点の作品展覧の英日共同企画展で、日本開催に先立ち、英国の大英博物館で「Hokusai_beyond the Great Wave」(2017年5月25日‐8月13日)が開催されました。
「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」©The British Museum
大英博物館にはアジア部門があり、数多くの様々な浮世絵コレクションがあります。
北斎関連コレクションは1000点ほどあり、英国開催の名称にもなっている「the Great Wave」〈「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」〉は3点のコレクションが見受けられます。
・収得年1906年:Arthur Morrisonより購入
・収得年1906年:Charles Rickettsより寄贈
・収得年2008年:パリオークションで購入
この3点の中では2008年収得のものが一番状態が良い感じですが、先頃の企画展で展示されたものもこのプリントでした。
実際の額装展示では、作品イメージ周辺に余白を設けその周辺に額装台紙マド抜きが配置されていますが、この余白は版画の紙の余白ではなく、版画の周辺を隠さずに全面を見せるために特殊な方法で作品紙の周辺に補われた和紙です。

江戸時代に制作された錦絵版画は、使用された色材によっては光による退色が懸念されますが、大英博物館では公開前に自館コレクションの「レッドフジ」と「グレートウェーブ」の色材の分析調査を行っており、その結果は次の通りです。
◇◇◇
=レッドフジ〈「富嶽三十六景 凱風快晴」〉=
「富嶽三十六景 凱風快晴」©The British Museum
・インディゴ:タイトル枠、署名、富士山の枠線、山の小さな木々
・プルシャンブル―:空
・プルシャンブルー+オーピメント:山肌の緑色域

=グレートウェーブ〈「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」〉=
・インディゴ:タイトル枠、署名、波の枠線、波の濃い青色
・プルシャンブル―:波の中間色の青色
・波の淡い青色については今後の調査を要する
・ボートの複数個所からヒ素が検出され、オーピメントの使用が示唆される
◇◇◇
Θインディゴはよく知られている「藍」です。
Θプルシャンブル―は、1704年頃にドイツで発明された人工顔料(ベルリンブルー)で人工顔料の中では最も古いものです。この青の有用性が広まるに従い、1750年頃までには全ヨーロッパに知られる色となっていたようで、その拡散を示すように、「パリブルー」、「アントワープブルー」(プルシャンブルーの明色種)、「チャイニーズブルー」などと名前が付けられています。日本にもたらされた時期は比較的早く、江戸時代の洋風画の先駆者である平賀源内(1728~79)は著書『物類品隲(ぶつるいひんしつ)』(宝暦13年-1763-刊)に「ベレインブラーウ(プルシアンブルー)」をとりあげており、源内唯一の洋画でも使用されています。また、源内に師事した秋田藩士小田野直武(1749~80)らの秋田画壇でもその使用が見られます。また、長崎貿易にたずさわっていた会所請払役(かいしょうけはらいやく)若杉五十八の「鷹匠(たかじょう)図」(寛政年間、1790年代)にもその使用が見られます。
プルシャンブル―は光や空気に対して耐候性が高いのですが、アルカリには敏感です。
Θオーピメントは色味は明るい黄色で、古来から使われてきた硫化鉱物顔料ですが、毒性があるため現代では基本的に使われなくなった色材です。

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