ナビ派_『オルセーのナビ派展・・・』

『オルセーのナビ派展;美の預言者たち―ささやきとざわめき』が開催されます。
Θ2017年2月14(土)---5月21日(日)
Θ三菱一号美術館 東京都千代田区丸の内2-6-2  http://mimt.jp/nabis/
 © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski
フランスの絵画派の「ナビ派」というのは日本ではなじみが薄いものです。中学・高校などの美術教科書にも出ていないようだし、そもそもナビ派をテーマにした展覧会が日本で開かれてこなかったし、ナビ派の活動期間が10年ほどであったということもあって、なじみが薄いのです。
1800年代後半、当時の美術文化の中心地であったフランスで、印象派画家達が現れます。アバウトな時代感覚でいえば明治維新の頃です。
印象派と言っても画家それぞれで観れば表現のアプローチは様々ですが、一般的には便宜的に、外光派と呼ばれる初期印象派、点描派と呼ばれる新印象派、そして後期印象派に振り分けられます。
1888年、学生だったポール・セリュジェ(1864-1927)がブルターニュのポン=タヴァンに滞在していた後期印象派のポール・ゴーギャン(1848—1903)のもとへ訪れますが、ゴーギャンはセリュジェに大胆に単純化させた絵を描かせます。パリにもどったセリュジェの作品「タリスマン(護符)」に接して刺激を受けた学友達の間で新しい美学風潮が生まれ、「ナビ」というグループが作られて絵画活動が始められます。これが「ナビ派」です。
輝かしいい後期印象派の成果は、19世紀末の10年ほどの間のナビ派によって受け継がれたのです。
ナビ派の画家たちは、どちらかと言えば裕福な上流階級の子供たちであったので、職業としての作家活動というよりも趣味的傾向が強いおしゃれな生活スタイルに近い作風と言えるかも知れません。
19世紀末、ヨーロッパは決して印象派一色であったわけではありません。黒田清輝によって日本にもたらされた旧体質で印象派に影響を受けたサロン系画壇、新理想主義系の装飾画家ピュヴィス・ド・ジャヴァンヌ、また幻想的な色彩のギュスターヴ・モロー、文学的な神秘画のナディロン・ルドン、印象派系ながら商業美術の基盤を築いたアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックなどなど多彩です。
20世紀を迎え、第一次世界大戦までの15年間、ヨーロッパ各地で多彩な造形運動が出現し、複雑な展開が起こりますが、顕著なものとしては、フォーヴィズム(野獣主義)とキュービズム(立体主義)です。
19世紀末の大きな潮流であった後期印象派と次世代20世紀初頭の潮流の狭間にあった「ナビ派」、近年様々な再評価が進んでいます。
明治~大正期にわずかな人々によって日本にもたらされた洋画、実は西欧ではもっともっと遥かに多彩であったのです。

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