アルフォンス・ミュシャ

先頃、アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)の複製プリントを額に入れたいというご注文があって、女子大生の方でしたが、美術館のミュージアムショップで買われたもので、縦長の構図のサイズということもあってかシートのみの販売だったそうです。あまりコストは掛けられないということでしたので、シンプルながら絵柄四隅のアール形状処理に配慮して仕上げました。
ミュシャはグラフィック広告分野のパイオニアの1人であるとともに、「アール・ヌーヴォー」の代表的な画家です。活躍したのは19世紀末~20世紀初頭で、その作品がプリントとはいえ、時代を経て21世紀の現代の室内装飾の一役を担うというのは喜ばしいことです。

日本では昨年の2013年にミュシャ展が2つ開催されて巡回となっていますので、ご覧になった方も多いかと思います。
2014年度の巡回予定は以下の通りです。
◎ミュシャ展 -パリの夢 モラヴィアの祈り- ミュシャ財団秘蔵
   《日本テレビ開局60年特別美術展》
 ・宮城県美術館 2014/1/18---3/23
 ・北海道立近代美術館 2014/4/5---6/15
◎知られざるミュシャ展 -故国モラヴィアと栄光のパリ- 
 ・岡山シティーミュージアム 2014/3/4---3/30
 ・パラミタミュージアム 2014/4/4---5/18

建築・工芸様式の流れは往々にしてルネッサンス以降の諸様式の組合せや反復とも言え、19世紀のフランス革命以降のヨーロッパの建築では、パリのエトワール凱旋門に見られるような古典趣味、浪漫趣味、あるいはこの2つの折衷形式が主流でした。しかし、この時代がそれまでと大きく異なったことは、産業革命に伴って社会が機械化・近代化され、結果として従来の様式に囚われない新しい時代の生活にふさわしい能率的で実用的な建築様式が求められるようになったこと、さらに、工業技術の発達によって石と煉瓦というそれまでの建築材料に「鉄」と「コンクリート」という新素材が登場し新しい胎動が始まったことです。新建築材料による最初の現れのひとつが1899年にパリ万博のために建てられたエッフェル塔です。
こうした中で、ヨーロッパ各地で同時的に興こった様式潮流が「アール・ヌーヴォー」(フランス)という言葉に代表されるもので、植物などの有機的な曲線のフォルムをモチーフとし、必ずしも機能や合理性に基づく形態をとらず、当時の浪漫主義文学が反映されているような幻想的な様式です。19世紀末のヨーロッパで流行したジャポニズムもその形成に少なからず影響を与えたであろうと想像できそうです。
「アール・ヌーヴォー」の隆盛は1910年頃終わり、第一次世界大戦以降は装飾性を排除する潮流が起ります。無駄な装飾と見るか豊かな装飾と見るか、時代が変われば評価も異なります。

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